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2016年に読んで良かった”10冊”

2016年の「読書」について振り返る。

  • 購入した書籍は約70冊(技術書含む、漫画は含まない)
  • うち読了or途中で読むのを辞めた本が約40冊

大体月に3~4冊触れるかどうか、という量だった。

自明だが、僕は決して「読書家」ではない。子育てや仕事、ブログなどの合間を縫って読んでいるため、時間の確保がまず大変である。必然的に自分の「課題意識への答えが期待できそうな本」や「ベストセラー」を手にとりがちで、これ自体は賛否あるかなぁと思っている。ちなみにフィクション小説はこれまでほとんど読んだことがない。

最近ではスキマ時間で効率的に読書をするために、iPhoneのKindleアプリとVoiceOver機能(3倍速)を組み合わせて「耳で読む」というスタイルを確立した。これはなかなか調子がよく、2016年後半の積読消化率に大きく貢献した。

そんなスタイルで今年読んだ本のうち、「個人的に良かった10冊」を紹介したい。

第1位 : 失敗の本質

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

  • 作者: 戸部良一,寺本義也,鎌田伸一,杉之尾孝生,村井友秀,野中郁次郎
  • 出版社/メーカー: 中央公論社
  • 発売日: 1991/08
  • メディア: 文庫
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書評記事を書こうとしては何度も失敗している不朽の名著。2013年来、毎年通読している。今年は経営における自身の課題意識と相まって最も刺激が多かった*1

太平洋戦争での「敗戦」を決定づけることとなった6つの盤面を取り上げ、「なぜその意思決定がなされたか」について考察された本。6つのうちの1つ、ミッドウェー海戦の項から引用するが、日本が極めて現実的な戦略を描き、丹念に国力を練り上げてきたことがわかる。

明治四〇年(一九〇七年)に制定された「帝国国防方針」と「用兵綱領」以来、日本海軍の仮想敵は、米国海軍であった。日本海軍は長年にわたって、広大な太平洋をはさんで対峙する米国海軍に対し、一定の兵力比を維持することに努力してきた。その戦略思想の中心は、短期決戦を原則とし、太平洋を越えて来攻する米国艦隊を日本近海に邀撃し、艦隊決戦により一挙に撃滅しようとするものであった。そしてこのような一貫した基本方針のもとに、約三〇年余にわたり、日本海軍は作戦研究、兵力の整備、研究開発、艦隊編成、教育訓練などを行なってきたのである。

一方で「戦略トップ」と「現場トップ」の意思疎通が曖昧なまま、適当に突っ込んでドーーーン!というケースがこのミッドウェー海戦である。

その他5つのケースを読んでも当時から日本が抱えてきた組織的な問題は何も変わっていないということがよく分かる。失敗の本質は確かに本質をあぶり出してくれるものの、その乖離を埋めるためのアクションは我々が取らなくてはいけない。我々が集中すべきは1にも2にもアクションなのだと突きつけられる一冊。

第2位 : 言ってはいけない

言ってはいけない 残酷すぎる真実 (新潮新書)

言ってはいけない 残酷すぎる真実 (新潮新書)

書評記事 : 『言ってはいけない - 橘玲』から読み解く育児のパラダイム・シフト - Yamotty Blog

お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方2015 知的人生設計のすすめなど「個人の資産戦略」で昔からお世話になっている著者が、「学術的なファクトをもとに人が声に出しづらい真実」をあえて明らかにするというコンセプトの本。僕は子育てにおける本質を教えてくれる本だったと思っている。

  • 知能のちがい(頭の良し悪し)の7~8割は遺伝で決まる。論理的推論能力の遺伝率は68%、一般知能(IQ)の遺伝率は77%
  • 精神病もほぼ遺伝で決まる。統合失調症が82%、双極性障害が83%。身体の遺伝率より遥かに高い(身長の遺伝率が66%、体重の遺伝率が74%)
  • 白人の集団の中に黒人の集団を混ぜると、黒人の集団は反白人のギャングスターとなる。白人の集団の中に一人の黒人を混ぜると、彼は白人の中でのHEROになる。同調圧力がストーリーを決める。

第3位 : ツイッター創業物語

ツイッター創業物語 金と権力、友情、そして裏切り

ツイッター創業物語 金と権力、友情、そして裏切り

Twitterという特異なサービスがどういう経緯で生み出されたのか、主に創業者間の関係性に着目して書かれたノンフィクション。

Twitter創業者の一人、エブのBlogger時代の話や、Twitter前身であるOdeo社の話も詳細に描かれている。スタートアップの創業ストーリーとして純粋に面白い、というのもあるが、なにより「ツイッターという世界で最も ”製作者の意図と、ユーザーの使い方が一致しない” 不思議なサービスがどうやって産まれたのかが垣間見える。

ジャック・ドーシーがFacebook CEOのマーク・ザッカーバーグへTwitterの売却について密談するシーンはドキドキした。

マークのメールがジャックの受信箱に届いた。〝T〟という胸騒ぎのする件名だった。長いメッセージでマークは、ツイッターとフェイスブックの組み合わせが、おたがいにとって合理的である理由を、要点をならべて説明していた。ふたつがいっしょになれば、世界を変えられる。人々を結びつけ、何十億ドルも稼げる。そのあと、マークは会社を買収しようとするときによく使う手を見せた。創業者たちが買収に応じないのであれば、フェイスブックは「ツイッターの方向に近づくようなプロダクトをつくりつづける」。キス付きの脅し。きみたちがフェイスブックに来れば、ぼくたちは幸せに暮らせるんだよ。それとも断れば、ぼくたちは全力をあげてきみたちを滅ぼすよ。また踏みにじられるおそれがあった。

第4位 : 論語と算盤と私

論語と算盤と私―――これからの経営と悔いを残さない個人の生き方について

論語と算盤と私―――これからの経営と悔いを残さない個人の生き方について

書評記事 : 完璧な経営は存在しない - 『論語と算盤と私』 - Yamotty Blog

今年唯一紙で購入した本。以下のメッセージが、mixi時代の朝倉さんの苦労と覚悟を一言で表しているようでとても心に突き刺さった。

動機は内から沸き立つものであるべき
職業としての経営者の世界に飛び込もうとするのであれば、その動機は内から自然と沸き立つ感情によるものであるべき 雇われ経営者が狡兎死して走狗煮らるの扱いを受けることもあるでしょう。それでも、それが経営者としての責務を全うした結果であり、肝心の会社が良くなったのであれば、まだ納得がいくのではないでしょうか。

第5位 : 確率思考の戦略論

確率思考の戦略論  USJでも実証された数学マーケティングの力

確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力

先日退任が報道されていたUSJ立て直しの請負人、森岡氏の最新作。若干鼻につく表現があるが(笑)、マーケターとして仕事に没入し、極めて高いパフォーマンスを出し続けるための「観察力」の一端が紹介されている。

USJがこの5年間、やることなすこと全弾命中でV字回復したことについて、「森岡さん、どうして当て続けることができるのですか? 秘訣を教えて下さい!」と質問される方が非常に多いですが、秘訣と言われましても、実は単純な話です。私は市場構造を精緻に理解することに情熱を燃やし、「勝てる戦いを見つけること」と「市場構造を利用する方法を考えること」に思考を集中しているのです。つまり勝てない戦を避けて、勝てる戦を選んでいるから、結果として勝つ確率が高いだけなのです。市場構造を理解する意味はまさにそれ、企業が勝つ「確率」を上げるためなのです

数字を使いこなす生粋のデータサイエンティストでありながら、最もユーザーインタビューやアンケートなどの定性評価をうまく盛り込み、USJというプロダクト全体を動かす様はプロダクトマネージャーとして学びがある。

第6位 : 僕らの仮説が世界をつくる

ぼくらの仮説が世界をつくる

ぼくらの仮説が世界をつくる

書評記事 : 編集者から学ぶプロダクト・アウト - Yamotty Blog

『宇宙兄弟』などヒット請負人でもあるコルク創業者・佐渡島さん。彼が作家と編集者という関係性のなかで、どうやってプロダクトアウトをし続けるかというチャレンジを読み取ることができる。

僕はクリエイターとしての作家へ対し、最大限のリスペクトを送る彼の姿勢が、プロダクトマネージャーとエンジニアの関係性に近くとても共感を覚えた。ポール・グレアムっぽい。

作家は、「異能の人」です。人口の1%どころではなく、0.1%か、0.01%くらいしか存在しません。一緒に仕事をしていて感じるのは、彼らは物語を作っているのではなく、頭の中にもう一つ別の世界を持っていて、そこへトリップしているのです。 だから、本という形だけだと、作家が創造したものの10%くらいしか使用していないことになります。それを、30%、40%に高めていくのが、これからの時代の編集者の役目だとぼくは考えているのです。

クリエイターの能力を最大限引き出したいものだ。

第7位 : 生産性

生産性―――マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの

生産性―――マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの

年末に駆け込んできたベストセラー。僕は2011年の東北大震災の被災以降*2、毎晩「起きたら明日には死んでいるかもしれない」という恐怖感がある。だからこそ無駄をなくしたい = 生産性を高めたいという意識が強い。この本が売れて「生産性」という概念が、定義が、日本企業・家族・隣の同僚など関わる全ての人の間で共通言語として扱われていることを強く望んでいる。

本で「生産性の向上といえばコスト削減」と思われがちなのは、商品企画やマーケティングに影響力をもたない「工場」のみでその言葉が使われ、発展してきたからでしょう。しかし後述するように、生産性を上げるためにはこういった非製造プロセスでの工夫や努力が不可欠です。 生産性を上げるには、「成果を上げる」と「投入資源量を減らす」というふたつの方法があると理解したうえで、安易に投入資源量を増やさないこと、そして、コスト削減だけでなく付加価値を上げる方法も併せて考えることが必要なのです。

また「睡眠を削って勉強する」というスタイルでやってきたところに、以下の引用はガツンときた。

成長意欲の高い人の中には、日中はめいっぱい仕事をし、家に帰ってから新しいことを勉強するために時間を投入する人もいます。私たちはそういう人を「向学心があり成長意欲が高い」と賞賛します。 たしかに目の前の仕事をこなすのに手いっぱいで、新たな勉強が何もできていない人よりはマシでしょう。しかしこれは、家に帰ったら仕事も育児もまったく手伝わない、昭和型の男性社員にしか許されない成長方法です。家では家事も育児も介護もしない、コミュニティ活動もボランティア活動もしない、趣味もない、仕事人間のための成長法なのです。 こういうスタイルしか存在しないと、育児や介護に時間をかける必要が出てきた時点で、まったく成長できなくなってしまいます。もしくは、「今は仕事もしっかりこなし、自分にも投資したい時期だから、育児休暇などとてもとれない」という男性がいつまでたっても減りません。 そうではなく、仕事の生産性を上げ、目の前の仕事だけでなく今後の成長のための投資や新しいチャレンジもすべて労働時間内でやりきれるようになる、そうなることを目指す——そういう意識に変えていかないと、プロフェッショナルとしての成長には、常に個人生活の犠牲がセットでついてきてしまいます

第8位 : 自分の中に毒を持て

自分の中に毒を持て―あなたは“常識人間

自分の中に毒を持て―あなたは“常識人間"を捨てられるか (青春文庫)

書評記事 : 道で己に逢えば、己を殺せ - Yamotty Blog

道で己に逢えば、己を殺せ

という大好きな言葉と出会った本。その言葉の意図は以下の様なものだ。

人生を真に貫こうとすれば、必ず、条件に挑まなければならない。いのちを賭けて運命と対決するのだ。そのとき、切実にぶつかるのは己自身だ。己が最大の味方であり、また敵なのである。

情熱家の岡本太郎氏の言葉が、易きに流れようとする自分をいつも奮い立たせてくれる。僕のバイブル候補。

第9位 : トヨタの強さの秘密

関連記事 : プロダクトマネジメント最大の誤解 - Yamotty Blog

今年書いた記事の中で最も難産だった、上記の記事の種となった本。「リーンスタートアップ」「デザイン・シンキング」などの世界中のITスタートアップにおいてスタンダードとなっているメソッドのルーツはトヨタの主査精度にあるが、トヨタの本質は実は誤解されている。トヨタのプロダクト開発力の本質はなんなのか、正しく理解することに、”世界基準のプロダクト”を創るヒントが有るはずだ。

「リーン(Lean)」という英語は「ムダのない、贅肉のない」という意味だが、米国では、「トヨタ(流企業経営)」のことも意味している。  たとえば、リーン生産とは、トヨタ生産方式(TPS:Toyota Production System)のことであり、リーン開発はトヨタ流の製品開発(TPD:Toyota Product Development)における手法や考え方の総称を言っている。

第10位 : ワールドトリガー

ワールドトリガー 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

ワールドトリガー 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

唯一マンガからのエントリー。友人から勧められて読み始めた少年ジャンプ連載中のマンガ。超ざっくりいうと地球人が武器を使って宇宙人と戦争するSF王道。基礎能力やスキルが低く、特徴のない主人公が『思考の創造性』だけを武器にチームを手繰りながら勝利を手にしていく様は、「もたざる人間の生きる道」を提示してくれる。勇気が出る。

番外 : 読みかけ・積読中

年末年始にかけて読み切りたいと思っているリスト。

イーロン・マスク 未来を創る男

イーロン・マスク 未来を創る男

天才 (幻冬舎単行本)

天才 (幻冬舎単行本)

わが友 本田宗一郎 (GOMA BOOKS新書)

わが友 本田宗一郎 (GOMA BOOKS新書)

総理 (幻冬舎単行本)

総理 (幻冬舎単行本)

さいごに

2016年は『書籍嫌い・苦手』の自分にしては比較的多くの本と触れた一年だった。毎日少しずつ読むというより、テンションが高まった時に一挙に読み切るスタイルが本当は好きなのだが、どうしても細々とした時間しか確保できないことが多いので自分に残るものが少ないと感じることがある。回避策としてはちゃんとブログに残しておくことかと思うので書評ブログの投稿数を2017年はKPIにしてみよう。

*1:ちなみに読者の一人である野中郁次郎先生は、モダンなソフトウェア開発手法とされる「アジャイル(スクラム)」の生みの親でもある。

*2:当時は宮城在住