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Yamotty Blog

プロダクトマネージャーの雑記

CXとUXを切り分ける

UX(ユーザーエクスペリエンス)というキーワードが市民権を得て久しいが、あまりに多くの概念をUXという言葉に詰め込んでいるように感じられ、個人的な問題意識としてUXという言葉ひとつでは何も伝えられないと感じている。

この「UX」のようなメタなキーワードには「多くを語らずともほどほどにコミュニケーションに役立つ」という良い側面もあるので、「定義を綺麗にしたい」わけではなく、「大きすぎるUXという概念を分割したい」という問題提起だと思ってもらいたい。

例えばECの現場では、

  • アプリの動作速度
  • 商品が届いた際のお客様の満足度

という2つのKPIがあったときに、両方共「UXを良くしよう!」という言葉で束ねられてしまう。しかしこれらを改善しようとした時に、前者はプロダクト、後者はサービス(マーケやCS)といった具合に対処するレイヤー・部署が異なるので、UXという言葉でコミュニケーションするのはなんとも具合がよろしくない。

以下の記事にCX(カスタマーエクスペリエンス)というUXに包含されるフレームが紹介されていた。このCXについて考えることで、対象的にUXとはなんなのかを浮き上がらせてみたい。

uxmilk.jp

なお元記事はこちらのようだ。

usabilitygeek.com

UXはサービスからプロダクトを切り出す

上記の記事ではUXとCXについて以下のように述べられている。

UX(ユーザーエクスぺリエンス)とCX(カスタマーエクスペリエンス)は全く異なる概念ですが、今ほどこの二つが近づいたこともありません。CXとUXが違う点は、CXが、実際にある人があなたのブランド、チーム、Webサイト、アプリ等々とのインタラクションで得た体験の総量であるという事実にあります。別の言い方をすればUXとはCXのごく一部に過ぎず、そのことは上の図に示した通りです。

もしCXとUXの境界が未だに曖昧な場合は、ユーザーとカスタマーの違いを理解することでよりはっきりするでしょう。両者が同一人物であることは頻繁にあることですが、ユーザーがユーザーのみ、カスタマーがカスタマーのみということも時々あります。

すなわち、UXとはサービスからプロダクトというレイヤーのみを切り出し、使い勝手に特化した概念として用いることだろうなと思う。そしてUXはCXに包含される。ただし、これについて僕は逆の発想で、以下のように考えた。

  • サイトやアプリを訪問する”ユーザー”からサービスへお金を払ってくれる”カスタマー”へ転換するのはごく一部
  • すなわちCXこそがUXに包含される
  • ユーザー(=プロダクトに触れる人)の満足度とカスタマー(=プロダクトからサービス全体に触れる人)の満足度は分けて考えよう
  • UXは全てのユーザーが触れるプロダクトの使い勝手を、CXはプロダクトを通じて接点を得たサービスの体験を指す

UXとCXに紐づくKPIとは

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UXやCXが表す「体験」の満足度を評価しようと思うならば、そこには指標がかならず必要だ。UXはプロダクト、CXはサービスというレイヤーとした場合に、どの指標をプロダクトが持ち、どの指標をサービスが持つのかを定める必要がある。

以下に「ECのプロダクトマネージャーがKPIを設定したなら」というお題で以下に簡単に羅列してみる。こうやって分類してみるとUXの定義が浮き彫りにできるので、例えばプロダクトの責任者と営業の責任者とでUXの定義が異なって「あれどうなった?」的な現象が減らせるかもしれない。

UXのKPI

  • クラッシュ率
  • レスポンススピード
  • 滞在時間
  • session/user
  • 継続率
  • etc...

CXのKPI

  • メルマガ登録数 and 率
  • お問い合わせ数 and 率
  • 配送遅延数 and 率
  • カート投入数 and 率
  • 購入数 and 率
  • アクティブカスタマー数 and 率
  • リピーター数 and 率
  • ARPU and ARPPU
  • charn rate
  • LTV
  • etc...

まとめ

  • CXを「UXに包含する概念」と認識することで、対照的にUXの意味する範囲をより限定的にでき、ミスコミュニケーションを防ぐことができるかもしれない。
  • またUXとCXそれぞれで改善すべきissueはなんなのか?KPIはなんなのかを分けることで、実は施策一つ一つの意図もシンプル、鋭く可能になる気がする。

後日談

この記事を記述している最中に、まさしくUXとCXを切り分ける場面があった。あるレコメンド系の施策の効果測定環境を整備していて、

  • その施策が産み出す金額的価値まで測定する
  • その施策自体がstickyに使われるかどうかに測定範囲を留める

という2案を検討していた。もちろん前者のほうが初期実装のコストは高く、より複雑である。まさにCXで評価するか、UXで評価するかというお題だった。結論としては後者のUXに絞り込んで実装を進める意思決定をしたのだが、

現状を把握し、施策のパラメーターに自動でフィードバックがかかり半機械学習していく

というゴールが明確だったことと、

ECの場合収益を生むかどうかは商材魅力という別のファクターも大きい

という要因からシンプルに「使い勝手の改良」に集中する後者の実装と早くループを回すことに重きを置く結論に落ち着いた。

この例のように、「収益が生じる回数自体が多いプロダクト/サービス」においては、UXを切り出すことを意図的に行うとより意思決定をスムーズに行えるかも?というお話でした。

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