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Yamotty Blog

プロダクトマネージャーの雑記

If you want to go fast, go alone. If you want to go far, go together.

新年度を迎え、組織にも別れと出会いの季節が訪れている。アーリーステージのスタートアップの場合、毎月数名のメンバーを迎えることも普通で季節性みたいなものは皆無だけれど、我々のチームもこの春インターン2名を社会に送り出し、別れを経験した。

スタートアップの組織づくりについての難しさは方々で語られており、自分自身も例に漏れず直面している。

自社サービスでマーケットを喰い、急成長を前提とした「スタートアップ」というのはある種の組織形態を指す言葉でもある。注意しなければいけないのは、スタートアップはいつでも崩壊する可能性や、普通のSMB(small medium business)に転落する可能性に溢れていることだ。

スタートアップという形態を維持し成長する組織を作っていくことは、大企業や中小企業の組織づくりと比較して遥かに困難である。狂ったアイデアは、ある日突如として「普通のビジネス」に駆逐されるリスクを孕んでいる。

medium.com

「良いビジネスのアイデア」=「良いスタートアップのアイデア」と言えるでしょうか。残念ながらそうではありません。 上述のような条件を満たす「良いビジネスのアイデア」は世界中の賢い人たちが考えていて、誰もがその実現に尽力しています。そして賢い人たちの多くは大企業で働いています。大企業はそうした多くの人的資源のほか、資金的、時間的資源を持っており、良いアイデアに対して彼らが取り組み始めれば、恐ろしい勢いで追いかけ始め、そして大量の資源を投下してスタートアップを追い詰めることになります。それは Netscape のビジネスが Internet Explorer の登場によって破壊されたように、です。

スタートアップが普通の中小企業になるのは、「良いビジネスを始めようとした時である」というのは一つの真実だと思っている。

スタートアップというチーム

スタートアップに限らず、組織、すなわちチームを作ることには2つの全く性質の異なる要素がある。

  1. 採用
  2. 組織化

1は文字どおり外部人材を会社に巻き込むことであり、2は獲得した人材のパフォーマンスを大きく発揮することとそれを会社の成長に向けることだろう。もちろん、それぞれは分離しているわけではなく密接なインタラクションをもつ。

スタートアップの採用環境は潮目を迎える

昨今はスタートアップへの資金流通量が増え、メルカリのような日本初のユニコーンの登場も影響し、スタートアップというジャンル自体のプレゼンスが高まっている。結果として日本でもスタートアップという業態への人材移動が起きており、一つの潮目を迎えているように思う。潮目の変化を強く感じるのは、今まで全くスタートアップへの接点もなかった友人が、「xxxへ転職考えているんだけどどう思う」と相談してきた時だ。

またより外へ目を向けると、働き方の多様化なども後押しし、これまで流動性が低すぎた日本の労働力市場が流動性を高める方向、すなわちエントロピー増大則にしたがって動いている。労働力=人を粒子として捉えると多くの行動形態はエントロピー増大則を超越しないことがよく語られており、この動きは止められないだろう。

結果としてスタートアップにとって採用は依然難しい課題であり続けるが、優秀な人材を調達する難易度は現在より低くなっていく。一方で、「人を採用する」ことよりも、「良いチームを形成していく」ことのほうがより重要で困難な論点になるのではないか。

良い人材も流動性の中にいるため、常にさまざまな機会からターゲティングを受けることになる。経営者からすると、優秀な人材に新たにjoinしてもらうことより、居続けてバリューを発揮してもらうことのほうがよっぽど難しいだろう。

速さから遠さへ

社会にインパクトを与えたくて立ちあがったはずのスタートアップは、小さな市場を独占するために「速く、速く」と邁進する。はじめはスタープレイヤーが牽引し、徐々に仕組み化が始まり、今度はその仕組を回す人材の採用を加速化する。こういった事業の流れに沿って多くのスタートアップが採る組織戦略は「採用へのフォーカス」であることが多い。しかし、それは正しいのだろうか

  • 速さを支える人材を必要なだけ採用する。
  • 多くが辞めていく。
  • 辞めるから更に採用する。

事業と同じスピードで採用を進め、こういったサイクルを迎えるのは一つの定石とすら思っている。誰もが一度は通る道ではないだろうか。言いたくないが僕も失敗している。採用への極端なフォーカスは意図せずチーム作りを疎かにする。リソースは限定的なのだからある種仕方なさはあるが。そんな時には「なぜスタートアップを始めたのか」に立ち返ると良い。

創業者や創業メンバーの多くは身近な課題の解決をキーにして、世の中へ大きなインパクトを目的にしていたはずだ。はじめは身近でニッチな市場を独占するために、大手の参入前に事業を成長させる必要がある。そのため「速さ」が最重要なフェーズは間違いなくある。

しかし、速さへのフォーカスだけでは「遠い場所」へ到達できないのもまた真実ではないかと思っている。遠くへ行くには、遠くへ行くチームを創らねばならないのではないだろうか。フェーズの遷移を意識しておきたいところだ。

遠くへ行くチーム

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“If you want to go fast, go alone. If you want to go far, go together.”(速く行きたいな一人で行け。遠くへ行きたいなら、みんなで行け。)

というアフリカのことわざがある。ちなみに僕がこの言葉と出会ったのは前職NPOで出会ったSVP代表の岡本さんを通じてだった。一緒になったセミナーで毎回使用していたフレーズで、横で聞くうちにいつの間にか僕も好きな言葉になっていた。

drive.media

「遠く」とはスタートアップになぞらえると「多くのユーザーに愛されるプロダクトでありサービス」だ。

Yahoo USの改革をチャレンジしたマリッサ・メイヤーが掲げたスローガン

People, Product, Traffic and Revenue

にも近いニュアンスを感じる。

techcrunch.com

彼女がGoogleからYahooへ招聘された時に、まず改善するのはPeople = チームだと言った。良いチームだけが良いプロダクトを産み出すことを知っていた彼女の優先度は正しかったんだろうと思う。Peopleという言葉にはスーパーマンに頼らずチームで遠くへ行く意志すら感じる

隠れた前提

「遠くへ行くチーム」とはどうやって構成されるのだろうか。その要素を定義することは非常に難しい。難しい課題を解くときは、たいてい隠された前提を見つけることが重要だ。この命題に隠された前提は何か。

それは「遠くへ行くには長い時間を共に旅しなければいけない」ということだと思う。 そう考えると、メンバー間で相互のパーソナリティを尊重できる関係性を築くことが必要条件になってくる。

良いポートフォリオ

お互いを尊重し合うというのは簡単なことではない。

日本風の尊重、すなわち相手を傷つけない耳障りの良い「ナァナァ」のチームでは、スキル・意識の高いエースメンバーが脱落する。逆に、創業期を邁進したスーパーマンが、遠さを意識したマインドチェンジができなければ後から加入したメンバーとのギャップが足かせとなり、チームとしてのパフォーマンスは上がらないだろう。

などなどを鑑みるに、 「遠くへ行ける良いチーム」への個人的な結論は「良いポートフォリオ」だ。ポートフォリオとは、相互を補完できること、すなわち

  • 個々の強み弱みが被らず
  • そして個々が強みを隠さず発揮できる(チャレンジし続けている)チーム

を指す。

個人的な経験から「チームのメンバーへ尊重を持ちえる瞬間」は以下2つと考えている。

  1. お互いを補完する強みを発揮しているから、相手の仕事に尊重を持ちやすい
  2. お互いが限界までチャレンジしていることを知っているから、相手にも尊重を持ちやすい

この2つを意図的に引き起こすチームマネジメントとして以下のように準備できることもありそうだ。

  1. 個々のSWATをチームに明示化する
  2. 個々のチャレンジがしやすい環境を創る(心理安全、機会)

納得解を選ぶ、という手段

良いポートフォリオたるチームを形成していくために、テクニカルには最適解ではなくチームの納得解を選ぶ、というのも一つの手段かもしれない。先の岡本さんの発言に以下のような示唆がある。

自分で考え抜いた結果出した戦略と、他のメンバーとの対話から生まれる戦略とが食い違うことがあるとします。自分では色々調べて論理も検証した上で言っているので、これがベストだと思っているわけです。そういったときに、問題解決のために最適そうな解を選ぶか、みんなで対話して納得できる解を選ぶか、という問題が発生します。その2つは、常にイコールになるとは限りません。そういう時に、議論を尽くした上で、僕は最適解ではなく、納得解を選ぶことがあります。譲れない部分はしっかりとおさえつつ、信頼するメンバーの意見を取り入れながら方向性を修正するのです。

結局のところ、みんなで納得感をもって取り組んだほうが、結果としてうまくいくことが多いという実感があるからです。ちょっと遠回りだったり、危うさがあるように見えても、みんなが腹に落ちている状態で物事にあたったほうが、まわりまわって不思議と良い結果につながることが多いですね。

  • 最終的にどんなアイデアもアイデア自体より、やりきれるかどうかが重要である。
  • その前提では、激しい議論で最適解を模索するより、チームが気持ちよく仕事に望めるよう議論を導くことが上位になる可能性もある。僕も後者が奏功するケースを何度も目の当たりにした。

チームも人間と同じで、体調が良い時ほどパフォーマンスが良い。時にはアイデアに妥協してでも「納得」を買ったほうが遠くへ行ける場合もあるだろう。

このケースが上手くハマる事例がある。僕(プロダクトマネージャーが実現したい機能仕様)を定義し、その実装にあたってはエンジニアチームで納得解を作ってから着手する、というのは具合が良いように感じている。

「WHY」や「WHAT」の領域は納得解は作りにくく、故に個人の意志に委ねたほうが良い場合が多いが、「HOW」については比較的作りやすい側面もある。性質・シーンによって使い分けると良いかもしれない。

まとめ

  • スタートアップが明確に意識すべきは速さから遠さへの転換期。速いチームと遠さを目指すチームは別物であり、ここで躓く例も多い。
  • 遠さを目指すには良いメンバーポートフォリオを組む必要がある。お互いに尊重をつくるためにマネジメントが意図的にサポートできることもある。
  • どうすすめるか、に議論が及んだ時は、あえて最適解を捨て、納得解を採用するのもオススメする。