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『衝動買い』をブーストする米EC『SPRING』のbots for Messenger

先日のFacebook F8カンファレンスで発表された幾つかの機能のうち、最も目玉の機能はbots on Messenger(正式名称)であることに疑いようがない。

jp.techcrunch.com

F8の発表と同時にCNNや米EC『SPRING』が手掛けるbots on Messengerが公開された。特にECでの先行事例という点で『SPRING』の事例について詳しく見ていきたい。

bots on Messengerの特徴

まず前提として、このFBが公開したbotsが注目されているポイントを整理すると以下の3つに集約される。

  1. チャット(リアルタイム、双方向、カジュアルテキスト)UIでのカスタマーサポートが可能になる
  2. AI(人工知能)の搭載が競合対比で最も容易、パーソナル・サポートに最も可能性がある
  3. 世界最大のMessengerプラットフォーム(MAU9億人!!)で駆動する

1のチャットUIによるカスタマーサポートは全てのbotサービスに共通する項目かも知れないが、2と3はbots on Messengerならではの強みといえる。

スマホに最適化したセレンディピティ・コマース

少し話はそれるが、スマートフォンに最適化された購買体験とは何か?について考えてみたい。

スマートフォンに最適化したECの結論は出ていない

  • まず、フリマ以外、すなわちB2CやB2B2CなどのビジネスモデルのECにおいて、スマートフォン向けネイティブアプリというのは実は思いのほか少ない(特に日本)。
  • Amazonや楽天、また日本のファッションコマースで圧倒的な地位を築くZOZOのようなプラットフォーム型ECはもちろんアプリを展開しているが、『多量の商品からユーザーが欲しいものを掘り当てて購入する』という購買体験が主となる。
  • スマートフォンは『長時間連続的に使う』ことにも『短い時間にサッと使ってサッとしまう」ことにも長けたデバイスである。
    • 上述のプラットフォーム型コマースにとってもアプリを展開することで『長時間連続的に使うユーザー』向けに良質なUXを提供することができる。

衝動買い × スマホ(アプリ)

  • 人の購買行動はこういった『検討買い』の他にもう一つ『衝動買い』が存在する。
  • 意識もしていなかったような潜在ニーズを見事に具現化した商品と”偶然出会って購入”に至ってしまうパターンである。
  • 検討買いと衝動買いのどちらが多いのか、というデータは前年ながら見当たらなかったが、メラビアンの法則(人間は情報の55%を視覚から得ている)からも視覚的訴求力の強い商品ほど衝動買いが多いというのは確度の高い仮説ではないだろうか。
  • 特にファッションアイテムはこの仮説にあてはまり、衝動買いが起きやすいと言われている。

この衝動性に基づいた購買体験を提供するセレンディピティ・コマースというECのモデルが2000年代後半に大流行したが、結果的に衝動買いを強くサポートできたサービスは数少ないという印象である。

スマートフォンの衝動購買を最適化する米EC『SPRING』

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こういった背景の中、USでスマホアプリに特化したセレンディピティ・コマースをリリースしたのが『SPRING』である(リリース時より僕がベンチマークしているECの一つ)。確か2014年にアプリをリリースし、2015年に大型の資金調達も完了している。

fortune.com

  • ビジネスモデルとしてはB2B2C
  • リリースから1年超、webからの購入はできない仕様(現在は可能)で、徹底的にモバイルアプリを磨いていた
  • 『SPRING』の最大の特徴は『決済ステップを極限まで削る(1-click対応)』『画像の品質、アプリでの遷移のしやすさ』など衝動性を追求したUXにある

前置きが長くなったが、この『SPRING』がF8と同時に公開したbots on Messengerのアカウントを公開した。本記事では、

  • ECにおけるbotsの運用リサーチ
  • セレンディピティ・コマースにおけるbots運用の優位性

について記載したい。

『SPRING』のbots on Messenger

とりあえずSPRINGがbotsにどのようなアルゴリズムを搭載しているのか、実際に触って確認してみる。

overview

  • チャットアプリに代表されるようなテキストメッセージングではなく、ユーザーへ幾つかの選択肢を提供し、商品へ誘導するカテゴリ機能に近い
  • またbotとのコミュニケーションが途絶えた後、botがremindしてくる。これはMessengerのpush通知機能に乗っかって届くため、高いリテンションレートが期待できるのでは、と思う

基本的なコミュニケーションフロー

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  • ユーザーが"go shopping"とbotに話しかけると、AIとのコミュニケーションが開始する
  • botが以下の順で問を投げてくるので、選択肢をボタンでユーザーが選択する
    • 性別(女性/男性)
    • 大カテゴリ(服/靴/アクセサリ)
    • 小カテゴリ(かばん/サングラス/時計)
    • 価格帯(~$75/~$200/$200~)
  • 問いに答え終わると、botが5つの商品を返してくれる。商品ごとに以下の選択肢が更に選べる
    • 購入する -> SPRINGのWebサイト/商品ページへ遷移する
    • 似ている商品を見る -> フィルタリング(協調?コンテンツ?)された別商品が新たに5つ提示される

その他

  • ユーザーから「go shopping」以外のキーワードをユーザーに投げかけても、フローの誘導する一律メッセージしか表示しない。これではあまりに機械然としているので、間違いなく改良してくるだろう f:id:yamo3:20160414150938p:plain
  • コミュニケーションが途絶えていると、機械的にremindしてくれる f:id:yamo3:20160414152442p:plain

発展性とまとめ

  • 実際に使ってみての現時点のメリットは「サイトやアプリを切り替えることなく商品を探すことができる」という点に尽きる。これは手軽さや出会いを重視するセレンディピティ・コマースとの相性は非常に良さそうだ
  • しかし毎回5つずつしか商品が探せないため、レコメンドの品質が大きなKPIになるだろうし、その点に発展性が多分にある
  • またユーザーから一切テキストがbotへ対して発信できない、というのはbotである必要性を失ってしまうためインタラクションがテキストで行えるように増強されるだろう
  • ECとしては新たにbotとのコミュニケーションログがパーソナライズの武器として手に入る。botとのコミュニケーションで意外な衝動買いを生み出せると、その背景にどんなメッセージングがあったのか解析することで『衝動買い』を科学することができる

ということで、自社でも弄ってみようと思います。

追記

この記事に書いたshop springのbotですが、なんらかの不具合が生じたのか既にcloseされ、現在はアクセス出来ない状況となっています。幸い良いリファレンスとして書き起こせたので良かったです。