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Yamotty Blog

プロダクトマネージャーの雑記

『世界で突き抜ける』

読書

世界で突き抜ける (INTELLIGENCE TALK BATTLE 1)

世界で突き抜ける (INTELLIGENCE TALK BATTLE 1)

現代日本のなかで若手の天才ランキングをつけるならば?という問があったとしたら、メタップスの佐藤航陽氏(@metaps_sato)はかなり上位に来るんじゃない、と思っている。本人の著書やブログの全記事を読み漁ると尋常ではない量のinputをしているのがわかるため、「天才」と称するのは微妙かもしれない。それでも「天才」が似合う一人だなと思う。

日本経済の巨人・竹中平蔵と天才・佐藤航陽を据えてnewspicksの佐々木編集長がインタビューする、という豪華な連載をまとめた本著。連載というフローで読み飛ばすよりストックとしてまとめて読む方が良かったなと感じた。トピックはリーダーシップ、教養、日本経済など。口語のため読み流すのは簡単だが、とりわけ竹中氏の引き出しや引用の広さ・深さが尋常ではなく、気になった箇所を調べたり引用された本を拾ったりして読み進めたので消化に時間がかかっている。

面白かったところを抜粋していきます。

リーダーシップの共通項

農耕民族と遊牧民族ではリーダーのタイプが違う。非常に典型的な例で言えば、農耕民族で大事なのは、水をどういうふうに分け合うかということ。だから社会の構成員全員の顔を立てながら、それぞれの利害を調整できるようなリーダーが好まれた。 いっぽう遊牧民族は、家畜と一族を連れて移動するとき、どっちの方向に行けば食糧があり、水があるかを考えて、進む方向を決めなければいけない。だから、斥候を放ってその土地の様子を調べさせる

僕の持論に、一切のコンテクストが共有されていない場面で人を判断するときには、「言葉ではなく行動のみから人を理解すべし」というものがある。何をしたか以外は一切見ない、という振り切った思想だが、案外よいレンズだと信じている。そしてこれは「遊牧型のリーダー」評価するときにより効果的なレンズだと思う。農耕民族は水の分け方を政治的に調整する。遊牧民族は斥候による「小さな失敗」をリスクに取り、より大きなリターン(食糧)の有りかを見極める。遊牧型のほうが行動主義的なのだ。肉の有りかを見つけた奴が偉い、というわかりやすい評価基準が好きで僕もこっちよりだとは思う。

「リーダーとは何か」なんて永遠の問題で答えはないけれど、梅原猛さんという歴史家が『将たる所以』(光文社)という本を書いています。もう絶版ですがこれは名著で、聖徳太子以来の日本の主要なリーダーを全部挙げて、その人が何をやったかを淡々と書いている。 結論めいたことは何も書いていないけれど、リーダーはみんな3つの要件を備えていたということが、そこから明らかに透けて見えるんですね。 1つ目は佐藤さんのおっしゃる洞察力です。非常に幅広い範囲で、何が起こるかを予見している。 2番目が自分の考えをステークホルダーに語って納得させる力。今でいうアカウンタビリティです。孫正義さんにせよ、スティーブ・ジョブズにせよ、優れた経営者は話がうまいでしょう。 3番目が組織を動かす力。これはなかなか難しい。みんなそれぞれに思いや都合を抱えて生きていますからね。 アカウンタビリティの中でも重要なのが、まさに佐藤さんのいうアーリースモールサクセスです。リーダーになって早い時期に、小さくてもいいから成功事例を見せると「ああ、この人なら大丈夫」と思わせることができる

「未来を予見する」「説明する」「組織 = 多くの人を動かす何かを持っている」の3つ。

なお竹中氏が東洋経済の4年くらい前の連載で同じ内容を語っている。

toyokeizai.net

1つ目は、自分の頭で世界や将来を見通す洞察力を持っていることだ。たとえば、「アメリカはこれからどう変わるか」「欧州の財政危機はどうなるか」「ライバル企業はどう動くか」といったテーマを頭の中で整理して、それぞれに洞察を持たないといけない。この力がないと「今どうすべきか」という判断を下すことができなくなる。 2つ目は、自分の考えをステークホルダーに語って、説得する力だ。経営者であれば、部下や株主や債権者や銀行を説得する必要がある。今ふうの言葉で言うと、説明責任だ。優れたリーダーは、みな話がすごくうまい。「私は口下手です」と言う人がよくいるが、そういう人に対しては、「君はリーダーに絶対なるな。君みたいな人がリーダーになったら、みんなが迷惑する」とあえて挑戦的に言っている。リーダーは説得力がないと駄目だ。 3つ目が、組織を動かす力だ。人は各自いろいろな想いを持って働いている。お金に反応する人もいれば、出世に反応する人もいれば、子供の受験のために頑張っている人もいる。そうした一人一人に対して、上手くインセンティブを与えて、組織を作る力が求められる。

郵政民営化を成し遂げた小泉総理とのタッグ時代秘話が本著でも出てくるが、やっぱり「小泉純一郎元首相は、見事にこの3つの力を備えていた。」とのことだ。

ちなみに『将たる所以』はAmazonでものすごい値段が突いている。

好き>量>質

これからの一流は専門性を点で持っていてもダメで、2点以上、ダブルメジャーが必須になる。ダブルメジャーを獲得するには、没頭できる何かを一つのメジャーとして持つのが必須。

日銀の吉野俊彦という戦後有名になったエコノミストがいました。 森鷗外の研究でも有名な人で、彼は書庫を2つ持っていたんです。第一書庫には夜中の12時までいてエコノミストの仕事をする。12時になったら別の第二書庫に行って、森鷗外研究をやるんです

本当のゼロイチはアート

アートは忙しい日々の中で時間をさくことができなくても、かならず来る「内省」の時間に必要。ゆえにリーダーとアートは切り離せない。

アートに触れると、本当に世の中を見つめ直すというか、自分を見つめ直すような瞬間があるじゃないですか。アートって感動なんですよね。それは映画でもいいし、音楽でもいい。感動した瞬間に心がリセットされて、もう1回自分のやりたいことに向き合えたり、本当に大事なことに気づいたりする。そういう効果がアートにはあると思います。 実はリーダーとアートは絶対に切り離せないんです。リーダーが集まる街には、アートが絶対に必要なんですよ。だから森ビルの故森稔会長の偉いところは、リーダーが集まるところに美術館をつくったこと。しかも忙しい人でも行けるように、夜中まで開いている

アートこそが本当のゼロイチ。

経済学者がいなくとも経済はある。でもアーティストがいないとアートは存在しない。アーティストは偉大ですよ。ゼロから感動を生み出すんですから。 だから私はアーティストに敬意を払うべきだと思います。よくパーティーで、演奏しているのにちゃんと聞かずにぺちゃくちゃしゃべっている、それでいて自分はアートに関心が高いといった顔をしている人たちがいるでしょう。そういう人に私は「静かにしろ」と注意するんです。「アーティストに敬意を払え」と言います(笑)

促す、がコーチング

やり方を教えるインストラクション、考え方をサポートするコーチング。コーチングの前提は自律。

日本ではよくコーチがピッチャーに対して、「このフォームでこう投げろ」と言うでしょう。あれはインストラクションであって、コーチングじゃないんですよ。コーチングというのは、「前よりステップが長くなったけど、どうして?」とか、そういうふうに問いかけて、自分で考えさせるんです。 たぶんこれは、これからのリーダー養成のひとつの道だと思います。たぶんインストラクションのほうが簡単ですよ。ただしインストラクションは、ひょっとしたら間違ったことを教えている可能性があるわけでしょう

Place

場所の自由が日本に「フロンティア」をはじめてもたらした。それこそ戦国時代はその間ずっとフロンティアだったわけで。アメリカはフロンティアを探し続けることで停滞した成長をまた再加速させた。次にフロンティアを手にしやすいのはやはりアジア。

日本の中で閉じこもっていては、やっぱり限界がある。明治維新ってあったでしょう。明治維新の最大のメリットって何だったと思いますか。 そりゃ廃藩置県とか士農工商をやめたとかいろいろあるけれど、最大のポイントは、「居住の自由」だと思うんです。どこに行ってもいいというのは、これ最大の自由だと思いませんか。 それまでは藩を出られなかったわけでしょう。藩の外に出ようと思ったら、通行手形というパスポートが必要だった。それが初めてネイションステイト(国民国家)になって、日本中を自由に行き来できるようになった。 それが今や世界中どこでも行けるようになったんです。これこそが最大の自由なのに、それを日本人は放棄してるんですよ。海外に留学する日本人学生の数が減って、企業も「日本には日本のやり方があるからいいんだ」なんて言っているうちに海外進出が遅れてしまった

教養とパッション

一つ知ると一つ足る、という感覚。何かを成し遂げたい、という志は個人に対する偏執的な感情と切り離すことはできない。変に賢くあることより、無知を気にせずとも強い想いを抱ける個人の方がかっこいいし、ずっと貴重な存在だ。

僕は教養とパッションを両立させるのは難しいと思っているんです。つまり、教養を持つようになって、いろいろな歴史とか法則性を理解すると、何かを恨んだり何かを攻撃したりするのが難しくなるでしょう。 言ってみれば、どんなことでも別に誰が悪いわけでもないから。こっちから見たらあっちが悪人でも、相手の立場になればこっちが悪人ですし。そういうことは国と国の対立でもあるでしょう。 でもその一方で、ビジョンとかパッションを持つということは、何かを激しく思い込むということでもある。視野が狭くて思い込みが激しいと、それが突進する力になると思うんです。でも教養を広げていろいろなものを知ってしまうと、いまの世の中、たいていのものはそれなりに合理的に成り立ってるとわかる。 「これはあまり理想的ではないけれど、現実はこんなものだし、ここを変えると誰かが困るんだな」とものわかりがよくなると、そのパッションが消えてしまうのではないかと思うんです。

なにかやってくれそうなワクワク感を伴うのはコンプレックス = 穴が大きい人。

逆に言えば満たされた環境で生きてきた人たちは、パッションは持ちえないんじゃないかな、と。だから穴の大きさそのものが、パッションの量とか規模なんじゃないかなという気がしますね。 すべて満たされていて完璧なんだけども、さらに何かほしいという人たちをあまり見たことがない。いろいろ掘り下げてみると、何か足りないものがあったり、何かを背負っていたりする。やっぱり幼少期の経験や、生まれた背景なのかなと

未来を予測する

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上記の本にも度々登場した佐藤氏の主張。テクノロジー・感情・経済を軸に未来を予測する。テクノロジーを理解する人は起業家にも少ないから、優秀な洞察を行う人、というポジションはがら空きの印象だ。

僕は未来を予測するとき、見るべきところは3つあると思っているんです。つまり現在という地点から、3本のベクトルが走っている。 1本はテクノロジーの進化。もう1本は人間の感情。好き嫌いとか、怖いとか。最後の1本は経済、お金です。儲かるとか儲からないもそうですね。 この3本のベクトルが走っている三角形の中間が、未来の方向性だと思っています。テクノロジーだけ追っていてもだいたいは破綻しますし、お金だけ儲けてもリーマン・ブラザーズみたいに元が取れなくなってしまう。感情だけで話をしていると、世の中は進まない。 だから、ちゃんと3方向の中間地点と、自分の考えてることが合ってるかどうかというのを見ていくと、だいたい、その通りになります。 この三角形が今どこにあるかを見分けるときに、一番指標にしやすいのがテクノロジー。連鎖的に起こってるからです。そこに軸を置いて、その方向性を見ていけば、ある程度、予測はできると思っています

ケネディとオドネル

一緒に命張った経験、みたいなものがあるかないかで「たとえばお前のためなら俺は死ねるというような友達はいますか」への答えが変わってくる。その点、近しい経験をもつ「フィジカルなスポーツや格闘技やってる人」の間にはそれに近い感情が漂っていることが多い。

キューバ危機の13日間を描いた、『13デイズ』という映画があります。主演のケビン・コスナーが、首席補佐官のケネス・オドネルという役をやっています。 もちろん、ケネディ大統領がいるわけだけども、そのオドネルというのがケネディの利害を超えた友達というか、かけがえのない存在なんですよね。「お前とだったら命を賭けてもいい」というような。 最後にものすごい情報戦になって、相手を混乱させるための偽の情報をソ連が流してくる中で、ケネディは悩むわけです。ケネディが悩んでいると、そのオドネルが、首席補佐官としてではなくて友人として「俺たちは何にもないところからここまでやってきた。もういいじゃないか。自分の信じる道を行こうじゃないか」と言う。 そういうすごく信頼感のもとにつながれた、お互いの役割分担ができる人がいるということが、私は成功の秘訣だと思うんですよね。 シリコンバレーのベンチャーの人たちはみんな仲がよくて、しょっちゅう週末になると幹部の家族だけで集まってパーティやってるとか。そういう話って聞こえてくるわけ。なんか日本は、つるんでるようで、実は意外とみんなバラバラなんですよ。それはいったいどうしてかというとね、実はお受験が関係してるんじゃないかと(笑)。 佐々木 すごい仮説ですね(笑)。 竹中 受験というのは友達もライバルになってしまうから、本当にお前のためだったら、俺は命を賭けてやっていくぞというような関係を育む余地がないんですよ。 それだったら多分よっぽどボーイスカウトやってるほうがいい。一本の紐で結ばれて、高い山登ってるほうがお互いに運命共同体になるわけでしょう。そういうところも多分、幾分かは関係してるんだと思うんです。 だから、「たとえばお前のためなら俺は死ねるというような友達はいますか」って聞くと、普通はいないですよね。私もそういうふうに聞かれたら、ものすごく自信があるわけじゃない。信頼してる人はいるけれども。

三木谷さんの特異性

スケーラビリティにはクリエイターからインベストメントバンカーへセンスの転換が必要。

三木谷さんとお話をしたとき、この人は起業家というよりもインベストメントバンカーに近いなと思いました。起業家ってゼロから1をつくるのが好き、というかそういう役割じゃないですか。 でも三木谷さんは1+1=3を考える人だと感じました。だから、楽天ってなんであんなに拡大したのか、話を聞いてよくわかった。 あの人は何と何をくっつけると、どういう価値が生まれるかということを考えている。たぶん、街をつくってる感覚と同じだと思うんですよ。 「コンビニがあってビルがあって、じゃあ、これとこれをくっつけると、この都市の価値が上がるよね、じゃあ電車を引こうか」みたいなことを、ちゃんと全体から見てる。 楽天市場もオークションも、ピースとして見てますね。だからゼロから1をつくっていくだけの起業家よりも、はるかにスケールが出てくる。ちょっと視野が違うんだなと思いました

金持ちを大事にする国へ

金持ちを大事にできないと、リスクをとれる人の母数は膨らまない。日本における起業家が増えない理由は金持ちが居づらい国だから、という側面が。

これまた面白い説があって、たとえばその設計をやってるのは誰だという問いかけがあるわけです。今はもうアメリカが変化しているからわかりませんけど、アメリカでも戦後、もう二度と戦争なんか起こしちゃいけないとみんなが思った。 そのためにどうするかということで、国際連合をつくって、IMF(国際通貨基金)をつくって、世界銀行をつくって世界を経済発展させる。こんなとき、もちろん表舞台ではチャーチルとかいろんな人が活躍するわけですが、この制度設計はウォール・ストリートがやったと言われてるんです。 佐藤 すさまじいなあ。 竹中 つまり、おカネを持ってる人が一番真面目に考える。おカネを持ってる人こそ、最高の戦略家になるんです。これ実はシュンペーターが言った言葉です。だから、イノベーションを起こすときは、ちゃんとした金融家がいないとダメなんですよ。 コロンブスもイノベーターだったけれども、おカネを出してくれる人がいたから、アメリカ大陸を発見できた。それがスペインのイザベル女王だったわけです。このおカネを出す人が、結局リスクの最後の引き受け手になるから、この人が最高の戦略家になる。スペインのイザベル女王は、世界初のベンチャーキャピタルです。 佐藤 そうですよね。エジソンもモルガンという出資者がいた。 佐々木 金持ちを大事にしましょうということですね(笑)。 竹中 本当にそうですよ。だから頑張る人を大事にして、金持ちを大事にして、リスクを取れる人を大事にして、それに敬意を払うという社会じゃないと。金持ちがちょっと成功したからって、ふんだくれとかね。さもしいですよ。そんなさもしい社会は発展しない

資本主義は成功ゆえに失敗する

成功を守ろうとすると、企業は秩序を保とうとする。結果、資本主義の前に失敗する。

たとえば、ベンチャー企業のときはすごく活力があったのに、会社が成長して制度や秩序が確立するにつれ、はっきり言って、今の東芝みたいになったり、官僚化したりする会社も多い。 社会全体がそのように守りに入ると、新しいものが生まれなくなる。それで結局、資本主義は衰退していく。これが、資本主義は成功ゆえに失敗するということです

「人生は取るに足りない夢だ」

思考は現実化する、ですね。

ナポレオンが言った言葉で、面白い言葉があるんです。「人生は取るに足りない夢だ」。寝て見る夢も醒めて見る夢も一緒なんだと。つまり人間が考えることは結局はその通りになるんだ、ということだと思います。人間は本来何にでもなれるもので、自分の思い通りの場所に行って思い通りの人生を送れる。ただ想像力が制約しているだけなんだと