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Yamotty Blog

プロダクトマネージャーの雑記

ターン・アラウンド - 『ザ・会社改造--340人からグローバル1万人企業へ』

ザ・会社改造 340人からグローバル1万人企業へ

ザ・会社改造 340人からグローバル1万人企業へ

三枝最新作を読んだ。

評価 : ★★★★☆

僕は新卒で丸紅という総合商社出身なのだが、このストーリーの舞台となるミスミは「戦闘商社」というイメージ。商人気質、少量多品種を短納期で納める圧倒的オペレーション、そして商社の枠を超えた生産能力からそういうイメージが有る。

本著は三枝氏がミスミ社外取締役時代に創業社長から社長就任の打診を受け、そのバトンを渡されるところから始まり、

  • 前任時代から続く戦略なき多角事業の閉鎖
  • 海外事業の”垂直”立ち上げ
  • 生産機能の保有、M&Aと長年をかけたPMI
  • 生産改善 - カンバンとKPI導入

など、正論・戦略、そしてなにより泥臭い地震の実行力をもってミスミを改革した様が描かれている。

と、途中で何度か挫折しかけた。事実、三枝氏の著書はテストステロン分泌量の多さからかオラオラの表現が多い(笑)が、「よく動く手に精密知能がついたような経営スタイル」は組織論に傾倒する経営者のそれと一線を画し僕は好きである。ターンアラウンドマネージャーのような、「創業者ではない立場からしがらみを断ち切り改革を断行する」というタフな経営スタイルにはピッタリなのだろう。

V字回復の経営など、著書は殆ど読んできたが、過去の著書と大きく異なった点がいくつかある。

  1. 実名 - ミスミという会社名が、登場人物がほぼ実名。過去の作品である『V字回復の経営』は匿名で描かれていたが、これがコマツの改革案件であったことも明かされている。
  2. 実働 - コンサルタントという外部からの切り口ではなく、ミスミの創業者からバトンを受け、その後の改革をCEOとして導いた経営者としてのストーリー
  3. 長期 - コマツ案件は2年程度だったとのこと。一方、ミスミのCEO就任から退任までは10年という期間をマラソンしたものだった。

三枝氏がミスミ就任からの10年間という期間の中で様々な経営ケースを追体験できる。一貫して三枝氏の意思決定には「インパクト重視」「未来重視」の姿勢が見える。「同じシチュエーションで自分ならどういう意思決定ができたか?」と問いながら読み進めることで良質なケース問題になった。

以下、引用とコメント。

プロ経営者とは?

特に「プロ経営者」と呼ばれる人たちは、いったいどういった存在なのだろうか。私が目標にしている定義は、  
1. どんな状況の会社に行っても、短期間で「問題の本質」を発見できる人。
2. それを幹部や社員に「シンプル」に説明できる人。  
3. それに基づいて幹部や社員の心と行動を「束ね」、組織の前進を図れる人。  
4. そしてもちろん、最後に「成果」を出せる人。  
有名なカリスマ経営者と呼ばれる人でも、「プロ経営者」とは限らない。ひとつの会社の経験だけなら、「その会社の経営者」にすぎず、そこでしか通用しない経営をしているのかもしれない。プロ経営者となれば、  
5. 業種、規模、組織カルチャーなどの違いを超えて、どこの企業に行っても通じる「汎用的」な経営スキル、戦略能力、企業家マインドを蓄積している。  
6. その裏づけとしてプロ経営者は、過去に、修羅場を含む「豊富な経営経験」を積んでいる。難しい状況に直面しても、これは《いつか来た道》《いつか見た景色》だと平然としていられる。  そして、プロ経営者のもうひとつの特徴は、普通の経営者より高給を取る人だ。プロの野球選手やサッカー選手と同じである。ある日突然、違う組織に移籍しても、1日目から高い技量を見せる。  
7. プロには自然に「それなりの高いお金」がついてくる

個人的には1と4が全てかなと思っている。「問いを正しく問えるか?」「そしてその解き方を開発できるか?」。殆どの課題は問いで決まる。他のメンバーがリソースを割いて解くべき問いを定義する、間違えてはいけない。それがマネジメントの責務だと思っている。プロ経営者ともなれば、なおさらだ。

PPMの有用性

プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)理論は、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)創業者のブルース・ヘンダーソンが生み出し、1970年代を「戦略の時代」と言わしめたほど一世を風靡した。戦略論の歴史では、古典的な恐竜ともいえる存在だった。  しかし、その後、PPMは実際の経営現場でほとんど使われなくなる。なぜだろうか。PPMへの批判はいろいろあったが、私(著者)の説明は単純である。  企業の「勝ち負け」や「競争優位」はものすごく複雑であるはずなのに、PPMではそのメカニズムが「成長率」と「マーケットシェア」の2軸だけで説明されている。それが単純すぎるという見方が広がったことが、いちばん大きかったのではないか。つまり、戦略コンセプトとして狭すぎるというのである。
そこで80年代に入ると、多くのコンサルタントや学者がPPMの単純さを超えようとする。「そもそも『競争優位』とは何か」「優位性を構築するために企業は何をすればよいのか」といった視点で、新しい戦略論を次々と出してきた。そのなかで最も有名になったのは、言わずと知れたマイケル・ポーター教授の「5つの競争要因」である。それはまさに「競争優位」のメカニズムを多元的に説明するモデルだった。  世のビジネスマンは、次々と出てくるそうした新しい論理に飛びついて、それらを使ってみては捨て、また次に行くといった、いわば戦略論の「流行」ともいえるような現象が広がった。そのなかでPPMへの関心は急速に失われていった。  ところが、PPMの有用性にこだわり、経営現場でそれを使い続けてきた人がいる。私である。

自社の問題はファネルに。マーケットを加味した環境はPPMで。フレームワークは問題発見のために使う。多くのフレームワークを浅く使うより、徹底してこの2つを使い込んだほうが精度の高い問題発見ができるかなと思っている。

「組織は戦略に従う」

経営者が変わり戦略が変われば、組織や制度も必要に応じて変わらなければならない。古典的な言葉だが、「戦略は組織に従う」のではなく「組織は戦略に従う」でなければならないのだ

この親子関係が逆になってしまう例がとても多いと感じており、以下の2つの記事はそこへの警鐘を鳴らしたもの。

会社の「危機」と、社員が抱く「危機感」は、必ずしも相関しない。むしろ逆相関だと言ったほうがいい。つまり、業績が悪く社員の危機感が高いはずの会社ほど、社内がたるんでいることが多い。逆に、業績がよく危機とは思えない成長企業の社員のほうが、ピリピリしていて頑張り屋である。 なぜだろうか。市場競争に敏感な成長企業の社員は、顧客の考えていることや競争相手の動き、世界の新技術の動向など、会社の「外」の動きに敏感に反応しているからだ。その戦いに後れをとると、社員は自分で「痛い」と思う
それに対してダメな会社では、社員が「内」の論理で動いている。市場での勝ち負けとか、顧客の声には概して鈍感である。何よりも負け癖が付いているから、負けても「またか」と思うだけで、社員はさして「痛い」と思わない。
組織の危機感を高める経営手法は、トップが「危機感が足りない」と叫ぶことではない。経営風土を変えるために、トップが「風土改革をしよう」と叫ぶことでもない。社員の意識を変えるために「意識改革をしよう」と叫ぶ経営者は、経営力が足りないのである。 私(著者)は30代に手がけた3社の経営でその無意味さを学んだ。以来、社内で危機感や風土改革といった言葉を口にしなくなった。しょせん、何も起きないのだ。 会社を変えるとは、経営者が計算し尽くした戦略的なアプローチと具体的アクションの切り込み方を用意し、そのうえでトップ自らが矢面に立つ覚悟で既成組織と既成価値観を突き崩していくことである。

同意でしかない。

「組織のカルチャーは何に最も影響を受けるか?」という問いに対する僕の答えは「リーダーの事業への向き合い方とその勝敗」であると思っている。リーダーとは何も”現状の経営陣”だけではない。むしろオペレーショナル人材が経営層にいる場合、「既成組織と既成価値観を突き崩していく」ことは難しいというのを身をもって体感している。プロダクトのCEOたるプロダクトマネージャーこそ「既成組織と既成価値観を突き崩していく」べき存在ではないだろうか。

  • 常に変化・伸び率の大きな問を模索すること
  • そしてそこに実直に向き合うこと、解き切ること

改めてこの2つに集中すべきだなと思った🤔 以下が所感まとめ。やっていこう💨💨💨